先日、石角完爾著「タルムード金言集」を読みました。
ユダヤ人が代々語り継いでいる、小さな子供に大切な知恵を授ける為の説話集です。
しかし読んでみると、子供に読み聞かせる以上に、私のような子育て世代のお父さんお母さんこそ読むべき内容がぎっしりと詰まっていました。
子供の成長を願うお父さんお母さんにぜひ読んで頂きたいです。
タルムード金言集
■タルムードとは
タルムードとは、ヘブライ聖書と並ぶユダヤ教の聖典で、生活上のあらゆる事柄についての規範とそれに対するヘブライ学者による議論が記されている書物です。
ユダヤ人にとってこの2つは、人生に起こり得るあらゆる問題を事前に知り、柔軟に対処する術を身につけるための知恵の宝庫であり、彼らは幼い頃からこの知恵の宝庫に学び、考え、自由に思考を巡らせ、人生に降りかかる様々な困難の乗り越え方を習得するのだそうです。
言わば、ユダヤ人の人生の羅針盤です。
■著者
著者は日系ユダヤ人で国際弁護士の石角完爾(いしずみ かんじ)氏。ユダヤ教の教えに共感し、厳しい勉強や儀式を経て、なんと60歳でユダヤ教へ改宗した方です。
■「タルムード金言集」は
ユダヤ教には、ヘブライ聖書やタルムードを子供でも理解できるよう、たくさんの説話があります。ユダヤ人はこの説話を親から子へと語り継ぎ、子供は様々な視点から物事をとらえる訓練を積むのだそう。
「タルムード金言集」は、タルムードの説話とそれに対する作者の解説で構成されています。
そして、その中でも印象に残った説話の一つを紹介します。
母鳥と三羽のヒナ
■「母鳥と三羽のヒナ」
母鳥と三羽のヒナがいた。
ある大嵐の際、母鳥は海を渡って安全な岸にヒナたちを避難させようとした。
大雨と強風の中、一度に三羽のヒナを運べないので、母鳥は一羽ずつ運ぶことにした。
一羽目のヒナをくわえて海を渡っている途中、母鳥はヒナに尋ねた。
「子供よ、お母さんは命がけでお前を助けようとしているが、お前はそのかわりに何をしてくれるんだい?」
一羽目のヒナは、
「大嵐の中でそんなことを考えている余裕はありません。まずは安全な所へ私を運んでください。」
その答えを聞いた母鳥は、その一羽目のヒナをパッと海に落とした。
二羽目のヒナをくわえて海を渡っている途中、母鳥は同じことを聞いた。
二羽目のヒナは、
「私はお母さんに毎日食物を運んできて恩返しします。」
その答えを聞いた母鳥は、その二羽目のヒナをパッと海に落とした。
三羽目のヒナをくわえて海を渡っている最中、母鳥は同じことを聞いた。
三羽目のヒナは、
「私はお母さんが私にしてくれたことを、将来私の子供にするつもりです。」
これを聞いた母鳥は、三羽目のヒナを安全な対岸へ無事に運んだ。
■説話が伝えたいこと
母が子を海へ落とす、子供に読み聞かせる説話とは思えない怖い話です。
重要なことだからこそ、子供たちの心にしっかりと印象づけるため「怖さ」を供えた説話になっています。
筆者の解説によると、この説話で伝えたいことは、「子供に教育するべき最も重要なことは『教育することを教育する』ことだ」と説いています。
ユダヤ人の親は子にたくさんの説話を語り教育しますが、「子供の頃に自分がしてもらって良かったと思う同じことを、あなたたちが大人になったとき、自分達の子供にしてあげなさい」と教えることこそが何よりの教育である言っています。
そうして、説話を聞いて育った子供は大人になり、幼い頃に習った説話を自分の子供に読み聞かせ、ユダヤの教えは世代を越えてこれからも継承されていくのでしょう。
■個人の感想
私は今年母になりました。
これから子供を育てる身として、この説話は親こそが学ぶべき内容であると感じました。
「親は子から返してもらおうとしてはならない」「子供に親孝行を求めてはならない」と言われている気がしました。
自分が欲しくて、会いたくて、自分のわがままで産んだのです。
生まれてくれて、日々成長する姿を見せてくれる、それだけで私は既にたくさんの幸せを貰っています。
我が子には、親孝行など一切気にせず、自分の人生を生きてほしいと願います。
まとめ
「タルムード金言集」は、親が子供に読み聞かせる為だけのものではなく、読み聞かせる親も学ぶべき事柄が多いと感じます。
子供を育てる為に、「自分が成長する必要性」を感じさせてくれる一冊でした。
「タルムード金言集」には他にも、
- ナポレオンとニシンの話~小さな儲けにとどめて、それを繰り返せ
- 難破船の三人の乗客~適正なリスクをとって生き残れ
- あるラバイの最悪で裁量の災難~最悪の事態はもっと悪いことから救ってくれることかもしれない
など、人生を幸せに生き抜く教訓が多数紹介されています。
子育て世代のお父さんお母さんに、ぜひ読んでもらいたいと思いました。
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